人切り村田
人切り村田

1.精神統一
 とある和室、一人の男が 座っている。ただ、目をつむり じっと・・。
何を考えているのか。いや、考えていないのか。
 
 和室の真ん中で、座禅を組み精神統一をしているのだ。
おのが気を高め、雑念を払い、死への恐怖をぬぐう。
 そばには 少し長めの 日本刀がある。おそらくそれがこの侍の獲物だろう。
 
2.瞑想
 殺気を殺し、敵の懐に潜り込み、一撃の下に離れる。そして次の一撃。
戦うための動作を想うを行う。
だが、奴には かなうのだろうか・・・。
 

3.敗北 
 数刻前 昌之はある老人の前に 膝ついていた。
「それがしの目は見えぬのだ。なのに なぜ、貴公は一本もとれぬのだ?」
 全くの息も上がっていない老人に、昌之は、すでに 百回以上も斬りかかっていた。
しかし、そのことごとくが切り替えされ、そのたびに地に伏せることになった。

「貴公、目で とらえようとしておろう?見ようとするな。<気>を詠め。」
「それとな、殺気がまだまだでておる。そんなものでは奴には勝てぬぞ?」
そう言い捨てると 盲目の侍は 去っていった。
 

4.屈辱 
 屈辱だった・・・。
今まで、破竹の勢いで 各地の剣豪をほふってきた。
 だが、この盲目の老人には一撃も与えられなかったのだ。
 
 
 無念さが 昌之の胸をよぎる。

 
 だが、このまま引き下がるつもりは毛頭ない。
私と、試合した者には 「死」を 与えなければいけないのだ。
 しかも 敗北した「私」を 生かして置いた。
屈辱以外の何者でもない。必ずや「死」を持って返さなければ。
 

5.決意 
 すくっと、昌之は立ち上がった。
その動作に 一転の迷いもない。
 
 右手に獲物を持ち、和室の外にでる。
月明かりが 昌之を照らす。
 まだ、冷たい風が その赤き衣をはためかす。

 
6.死闘へ 
 そして、侍は 盲目の老人の去った方角へ
歩んでいった・・・。
<終わり>