<やぶりし者>
とある道場、一人の老が 座っている。
そばには、長めの 日本刀がある。
おそらくそれがこの老の愛刀だろう。
その後ろには、看板も見える。
その服装からして、道場主と見える。
その老は 座禅によって気を高め
雑念を払い、死への恐怖をぬぐう。
だが、奴には かなうのだろうか・・・。
<道場破り>村田・・・
やつの通った後は、道場は必ずつぶれる。
イナゴみたいなやつだ。
やつが、私の道場に近づいてきた。
看板を隠せばやり過ごすことも可能だろう。
だが、みすみす通すわけには行かない。
私の後ろには門下生50人がいる。
そして、つぶされた者の願いがある。
一刻の後、老は立ち上がった。
その動作に 一点の迷いもない。
右手に刀を持ち、和室の外にでる。
星の光が当たりに散らばる。
道場破りは ここから西の原で休んでいるらしい。
「今、引導を渡してくれる」
そう、はっきりとつぶやくと、
老はゆっくりと歩んでいった・・・。
その後、この道場主に若い男がなった。
結局、老は帰ってはこなかったのだが、
道場が繁栄していることから、
<道場破り>はここにはこなかったようだ。
相打ちになったとは思えないが。
今もこの道場は多くの生徒を送り出している。
<終わり>